災害文化事例カタログ

避難所を体験してみよう@荒町小学校

2023年2月21日 仙台市立荒町小学校

災害は、いつかまた発生します。仙台市では、災害を生き抜く力を「文化」として身につけてもらおうと「災害文化」の普及啓発に取り組んでいます。
その一環として、荒町小学校さんのご協力のもと、避難所体験のイベントを開催しました。

12年前、東日本大震災の時はすごく寒かった。そしてイベント当日も冷え込んでいました。
避難所には「なにがあって」「なにがないのか?」を見ていただき今後の気づきに繋げてもらえればと思います。


本日の講師は、仙台市地域防災リーダー(SBL)、特定非営利活動法人 防災士会みやぎ 副理事長の若生彩さん。
防災のスペシャリストに避難所のことを紹介してもらいます。

●若生さん

仙台市地域防災リーダー(SBL)は現在800名以上が市内で活躍しています。そのうち女性は200名あまり。
私はこの荒町小学校で3回ほど避難所対応を行なっています。
仙台市の場合、市内で震度6弱以上の地震が発生した時には、全ての指定避難所で開設に向けた準備を行います。
他に、洪水・土砂災害の恐れがあるときや、津波警報・大津波警報が発令されたときにも必要な地域の避難所が開設されます。
警戒レベル3「高齢者等避難開始」が発令されたら、高齢者の方だけでなく、怪我をされている方、妊娠をしている方、体の不自由な方、小さな子供のいる方など、避難に時間のかかる方は避難してください。

そして大切なことをお伝えします。自宅等で安全が確保できる場合は、必ずしも避難所に来るのではなく、自宅にとどまることも選択肢の一つです。
荒町周辺には大勢の方が住んでいますが、この避難所には約200名しか入れないのです。自宅が安全と判断できたら、自宅にいてください。

備蓄倉庫を見に行こう

さて、避難所にはどんな備蓄物資があるのでしょうか?
実際に、備蓄倉庫に見に行ってみましょう。
荒町小学校では、校舎の中に備蓄倉庫があり、水や食料品などが備蓄されています。

屋外にも備蓄物資があります。
ピロティには屋根がかかって、水道もあり、避難所開設の際には大鍋を出して煮炊きも出来ます。

では、体育館に戻り、代表的な備蓄を詳しく見てみましょう。


アルファ米のおかゆ。
クラッカー(銀色のパックに26枚入っています)。
カレーライス。(ご飯とカレーが入っていて、ほぐすとそのまま食べられます。温めるとさらに美味しいです)

食料は、最初はクラッカーなど手軽に食べられるもの。次に封を開けるだけで食べられる調理不要食。2日目以降はアルファ米などの調理が必要なものの順番で配られます。


キューブ状の粉ミルクです。粉ミルクは、お湯が必要ですね。


この多言語シートは全ての避難所に備えられています。
災害時に言葉がわからないと大変ですね。
仙台には1万人以上の外国籍の方が住んでいます。一番多いのは中国籍の方。次いでベトナム籍、韓国・朝鮮籍の方です。
各国の人にわかるように、このようなシートがあります。
多言語に対応することも大切ですが、ひらがななどの簡単な日本語であれば解る方がいるので、優しい日本語で話せばコミュニケーションは取れることもあります。


真空パックされている毛布です。
毛布は使い終わったら、クリーニングをして次に備えて再パックしています。

避難所は必需品を用意していますが、種類や数に限りがあります。もし、避難の時に時間と余裕があるのなら、自分の毛布や自分の身の回りのものなどは、ご自身で用意してくるととても助かります。

以前、大雨で荒町小学校が避難所となったときは、毛布が足りなくなりました。
夜間は冷え込み、段ボールや毛布を入れていたアルミパックを床に敷いてしのいでいました。
皆さん、避難の際には「必要なものは自分で持っていく」ことが大事です。

紙おむつや生理用品などは、避難所で必要な時に配送・補充されます。
ですが人によって使い慣れたものがあるので、生理用品などはぜひ非常用持ち出し袋に用意して欲しいです。

段ボールトイレの登場

避難生活では、トイレも大変です。食事は我慢できてもトイレは待てません。
過去の実績から発災後、6時間以内に7割の人がトイレに行きたくなるそう。
避難所のトイレが大渋滞になることもあります。

そこで便利なのが、段ボールトイレです。
この機会に覚えましょう。段ボールトイレの作り方です。

元は水の入っていたダンボール。この段ボール箱を使って、10分の工作でトイレが出来ます。
二つの箱を入れ子にし、口のところに幅を作り、出来れば新聞紙などでクッションを作ってあげると身体にも優しいトイレができます。
箱に、保護のため袋をかけます、可能なら不透明の袋がいいですね。中に吸水ポリマーの衛生用品を入れればいいんですけど、一番使いやすいのはペットシーツです。安くていっぱい入ってます。これは備えておくと便利です。


「あ。高さ的に落ち着くし、良いですね!」
四隅を重ねると強度が出るんです。そして更に強度を出すためにテープでぐるぐる巻きにするといいです。

さて、防災士 若生さんの技が次々に炸裂します。

夜は、避難所が暗くなります。


仙台市の避難所では、太陽光発電と蓄電池で、体育館でも室内灯の一部が点灯します。ですが、トイレとかは?

いまはLEDライトが100円ショップでも広く流通してます(以前訪問しましたね!)

これに水の入ったペットボトルを載せると光が拡散します。
さらにコピー用紙を折って筒を作ると、工事現場のランタンみたいに光を拡散してくれます。

さらに紙なんで、色々と書けるんですよね。「受付」「トイレ」「物資こちら」など、工夫次第です。
ウエットティッシュの容器も、中にLEDライトを入れるとランタンに変身。あるものを利用して工夫をしましょう。

パーテーションで区切った家族スペース

続いてパーテーションの体験です。
避難所に備蓄されている数には限りがありますが、一家族一区画です。入ってみましょう。

「寝れる寝れる!」

簡易トイレを体験しよう

次は、簡易トイレの設置体験。
地震が起きてすぐの時は、配管が破損している可能性があるので「トイレに水を流さないほうがいい」って耳にしますね。
特に高層階などはそうです。そんな災害時のための簡易トイレです。

家庭には45リットルのゴミ袋がありますね。
それを一度便器にかけて、さらに今回は各避難所に備蓄されている簡易トイレを掛けます。吸水シート、ポリマーも入っています。
用が済んだら、口を縛って燃えるゴミへ出してください。

皆さんで、体験してみましょう。
なかなかサイズが合いません。それでも、なんとかやり過ごすしかないですね。
キャンプ用の椅子の座面に穴を開けて、トイレとして活用した話もあります。
あるもので応用の精神が必要です。

本日のまとめ

参加者の方から感想・質問がありました。
「実際に避難所に行ったことがなかったので勉強になりました。今日のお話で避難所に行く必要がないときは自宅にとどまるということでしたが、逆に避難所が開設されたときには、手伝いに行かなくていいのですか?」

●若生さん

まずは避難した人と、避難所の運営をしている人で助け合うのが基本です。お手伝いいただくのはありがたいことですが、運営側も全く知らない人に「手を貸してください」とはなりにくいものです。ですから、普段から避難訓練や町内会の清掃活動などで地区の人と顔見知りになっておくことが大切です。「あぁ、この人知っている人だ」となると、お手伝いをお願いできる安心感につながります。

最後に大事なことをお話しします。
まず、災害に備えて、一週間分の食糧と水を備えておいてください。
そして家族とどういう方法で連絡を取るかを、あらかじめ決めておいてください。「どこの避難所に避難するか」「再会場所をどこにするか」そして「再会する時間をあらかじめ決めておく」といいです。「夕方の6時、9時」と決めておけば、他の時間は別の作業に集中できます。
宮城は日本の中でも大きな地震が多いところです。東日本大震災の後にも、震度5を超える地震が何度も起きています。
なので、家具の固定や食料の備蓄など、大きな災害への備えは、平時である今のうちにやってください。
今がチャンスです。そして、ご自身の地域の避難訓練に参加してください。