災害文化事例カタログ

「きっかけ」から「実践」まで 「仙台防災未来フォーラム2024」参加レポート

震災の経験を未来の防災につなぐため、市民が防災を学び、日頃の活動を発信するイベント「仙台防災未来フォーラム2024」が、2024年3月9日(土)に開催されました。

10回目となる今回のテーマは「仙台枠組折り返し みんなで今できる防災(こと)※」。過去最多となる延べ139団体が参加し、防災に関する様々な展示や情報発信を行いました。
メイン会場の仙台国際センター展示棟には、朝からたくさんの市民や関係者の皆さんで賑わっていました。
※「仙台防災枠組」は第3回国連防災世界会議(2015年)において採択された国際的な防災の指針です。世界で取り組むべき4つの優先行動と7つの具体的な目標が設定されています。


入り口のそばにはキッチンカーも出店し、楽しみながら、親しみを持って防災を学べるこのイベント。会場に入ってまず目に飛び込んでくるのが、お子様と一緒に学べるスタンプラリー企画です。


「防災ヒーロー入団試験」と書かれた紙を受け取って、会場内に設置された3つのクイズに答えていきます。クイズの内容は、どれも防災にまつわる知識問題。「防災ヒーローになろう!」という呼びかけに、真剣に取り組む子どもたちの姿が見られました。


3問全ての問題に正解したら「最終試験」の会場へ。避難の際に役に立つ、新聞紙で作る簡易スリッパ作りに挑戦。自分で作ったスリッパで、足ツボマットを渡り切ればクリアです。

「靴下のままだと痛くて歩けない足場も、スリッパを履いて渡ると痛くない!」
渡り切った参加者からそんな声が聞こえてきました。実際に被災した際にガラスやがれきが散乱する場面を想定した、実践的な防災術が学べた瞬間でした。
クリアした参加者には防災ヒーロー認定バッジのプレゼントも。子どもも夢中になれる仕組みで、親子で防災をより身近に感じていただくことができました。


ブース展示のエリアには、大学の研究室やサークル、学校として防災に取り組む高校など、様々な団体の成果が展示されていました。

「多賀城高校 災害科学科」は全国で2例目の防災系学科として2016年に設立されました。ブースには実際に生徒が立ち、訪れた人たちに授業やフィールドワークを通して学んできたことを解説していました。避難所で役に立つダンボール製の簡易ベッドについて研究し、その作り方を紹介する展示や、実際に体験したり、当事者に話を聞いたりすることの重要さをまとめた資料を元に熱心に説明。たくさんの人が足を止め、耳を傾けていました。


「東北大学SCRUM」は学生によるボランティアサークルです。「ボランティア部」「魅力発信部」「災害救護部」に分かれ、ボランティアや防災に関する学生向けの情報発信から、対外的なボランティア活動まで精力的に活動。ブースには、その成果をまとめた資料が展示されていました。
実際に能登半島地震の際にも、SCRUMのメンバーが支援を行ったとのこと。多くのボランティア現場を経験したからこその、力強い報告が聞けました。


他にも、仙台青葉学院短期大学 保育科の学生がゼミの活動として自ら考え、作成した「気候変動ジェンガ」を体験できるブース(NPO法人とうほく食育実践協会との共同ブース)や、


居住地域や家族構成、「虫が苦手」などの個人的な質問に1分ほど回答するだけで、その人に合った防災グッズが選定され、実際に購入までできるWEBサイトの紹介など、防災をより身近に、簡単に実践できる取り組みやサービスがずらりと並んでいました。


会場内では、防災関連グッズの紹介や販売も行われていました。株式会社Amcasさんが販売する災害用下着は、避難生活において、女性の尊厳を守るために開発された商品です。下着らしくないデザインや体にフィットする伸縮性、そして長い避難生活を想定した、速乾性と抗菌性に優れた素材でできています。同様の視点でアミー株式会社が開発した使い捨て布シートは、災害時に下着に貼って清潔さを保つことができます。
いずれの商品も、当日にその場で購入できるようになっており、知識や教訓だけでなく、実際に市民の皆様が「備え」を手にすることができるイベントとなっていました。


会場では、メインステージの他、プロジェクターや客席を設けた発表エリアが8つ設けられ、幅広い内容の発表やワークショップが展開されていました。そのうちの一つとして、防災キャンプ にも登場してくださった防災士イラストレーターのico.さんによる『被災シミュレーションもしもすごろく』を使ったワークショップも行われました。今回は、高齢者・障がい者・乳幼児が集う複合施設『ノキシタ』の代表・加藤村長との対談も行われ、防災弱者を作らないための日常的な取り組みや考え方について参加者は耳を傾けていました。

また、メインステージでは、東北弁で落語を行う六華亭遊花さんが防災を絡めた噺を一席披露しました。
防災には地域の人や家族との日頃のコミュニケーションが大切になってくるという枕から、夫婦間のコミカルなやりとりを描いた物語へと繋げ、笑いと教訓を散りばめた噺に昇華しました。


午後には、お笑い芸人のテツandトモさんが登場。お馴染みの歌とコミカルな動きを披露すると、「みんなもやってみよう!」と呼びかけます。手を挙げた何人かの子どもをステージに呼び、テツさんが「なんでだろう」の動きを伝授します。そして、いつもの動きの中に、地震の時に頭を守るポーズなどを取り入れ、みんなで楽しく防災の意識を身につける内容へとまとめました。

「防災」を、自分に関係のないお堅いテーマと捉えるのでなく、各世代がそれぞれの視点で学べるようなステージプログラムとなりました。


メイン会場近くの「国際センター駅」2F、青葉の風テラスで行われた「せんだい災害VR体験&マイ・タイムライン作成」にも、多くの市民・家族連れが参加していました。VRゴーグルをつけて災害を疑似体験した後、災害が起きたらどのような行動を取ればいいか事前に計画する「マイ・タイムライン」の作成を行います。発生直後にいかに素早く適切な行動を取れるかが重要になってくる災害対応。体験を通じて、家族で話し合うきっかけが生まれていました。


「備える」意識の第一歩となるような情報の提供から、より深く防災を知るための研究発表。防災環境都市・仙台として、市民の実感を高める体験型コンテンツや、すぐに実践できる防災行動としての、商品紹介・販売まで。盛りだくさんの内容で展開された、仙台防災未来フォーラム2024。

終わりのない「防災」というテーマを、より身近に、自分ごととして考え・実践し続ける。そんな意識が参加した一人ひとりの中に芽生えるような1日となりました。